父親へのプレゼントに、ギターのボディを膝の上に置くための補助具を作ることにした。本体は PETG で印刷するつもりだったのだが、PETG は硬い。そのままギターに当てると傷つけてしまうので、PETG とギターの間に柔らかい緩衝材を挟むことにした。

素材は TPU。ちょうど Amazon のセールで eSUN の TPU 95A が安くなっていたので、試しに買ってみた。

TPU を刷るのは今回が初めて。しかもうちのプリンタは Creality K2 Pro で、TPU は CFS(Creality Filament System)を通せないという話は聞いていたので、初めての直挿しでもある。

  • 乾燥と速度制限さえやれば、詰まりもなく一発で刷れた
  • 95A の硬さは緩衝材にちょうどいい。押せばへこむが、ぐにゃぐにゃではなく、実際にギターを受け止めてくれている
  • K2 Pro でも、トップマウントのスプールホルダーから直挿しにすれば使える
eSUN TPU 95A フィラメント 1.75mm 1kg ブラック

eSUN TPU 95A フィラメント 1.75mm 1kg ブラック

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eSUN TPU 95A はどんなフィラメントか

TPU は、ゴムのように曲がる柔らかいフィラメントである。「95A」は硬さ(ショア硬度)の表記で、TPU の中では硬めの部類。今回買ったのは径 1.75mm・1kg のブラック。

eSUN TPU 95A のスプールと外箱。ラベルに TPU-95A、1.75mm、1kg の表記

実際に使ってみた

まず CFS の迂回。 K2 Pro は CFS からチューブを通してエクストルーダーへ送る構造なのだが、柔らかい TPU はこの経路で座屈したり詰まったりするので通せない。なるべく直挿しが良い、という記載もよく見かける。そこで、Creality Cloud で公開されている K2 Pro 用の Top Mount Filament Spool Dispenser Bracket を先に印刷しておいた。本体の上に載せるスプールホルダーで、ここからエクストルーダーへ直接送り込める。先人の方々に感謝。

K2 Pro の上に載せたトップマウントのスプールホルダーに TPU のスプールをセットした状態。フィラメントが下のエクストルーダーへ直接伸びている

次に乾燥。 TPU は吸湿しやすく、湿ったまま刷ると気泡や糸引きの原因になる。フィラメントドライヤーで 55℃・約 8 時間、乾燥させてから使った。プレートは K2 Pro 付属の PEI 両面フロストプレートをそのまま使い、念のためスティックのりを薄く塗っている。

結果は一発成功。 詰まることもなく、緩衝材の形にちゃんとなった。糸引きも気泡もなく、層の乱れも見当たらない。表面はマット。TPU は印刷が難しいと聞いていたのだが、時間がかかる以外は拍子抜けするほど素直だった。地味に嬉しい。使った量は約 18g で、1kg のスプールはほぼ丸ごと残っている。

肝心の硬さも十分で、PETG の本体とギターの間に挟んでしっかり緩衝材の役目を果たしている。

eSUN TPU 95A で印刷したギター用の緩衝材。黒い箱型で上面が開いており、表面はマット

K2 Pro で使った設定

Creality Print の「Generic TPU」プリセットを複製して、必要なところだけ直した(ノズル 0.4mm)。要点は 3 つ。

  1. チャンバー温度制御は OFF、排気(空気ろ過)は ON。 庫内が温まると送り経路の TPU が軟らかくなり、エクストルーダーで座屈して詰まる
  2. 最大体積速度を 3.5mm³/s に制限。 K2 系のエクストルーダーは TPU が座屈しやすいと言われているので、とにかく遅く押す
  3. リトラクトは短く、ゆっくり。 TPU はゴムなので、速く長く引いても伸びるだけで戻らない
項目
ノズル温度(初期層/その他)225 / 225℃
ベッド温度(初期層/その他)50 / 50℃
最大体積速度3.5mm³/s
最小造形速度10mm/s
リトラクト長/速度0.8mm / 20mm/s
Z ホップ0.2mm
モデル冷却ファン(最小/最大)40 / 70%
最初の数層は冷却しない1 層
プレッシャーアドバンス0.05
流量比率1.00

プリント設定側でも加速度を 2000mm/s² 程度、外壁速度を 30〜40mm/s に下げた。最大体積速度の制限では加速度は落ちないためである。

イマイチな点・注意点

  • 遅い。 最大体積速度 3.5mm³/s は、PLA の感覚からすると相当に遅い。大きな造形物を刷るなら覚悟が要りそう
  • 乾燥が前提。 買ってすぐ刷るのではなく、ドライヤーで数時間乾かす工程が挟まる
  • スプールホルダーの準備が要る。 CFS を通せない & 直差しが良いとのことなので、スプールホルダーを別途印刷する手間がかかる

まとめ

eSUN TPU 95A は、乾燥と速度制限という TPU なりの手間はあるものの、初めての TPU でも糸引きなしで素直に刷れるフィラメントだった。緩衝材や滑り止めのような小さくて柔らかいパーツを作りたい人が、試すには価格も安く良いフィラメントだった。パッキンのようなものを作りたかったので、今度ためそう。

eSUN TPU 95A フィラメント 1.75mm 1kg ブラック

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